母子同室 現在出産の取り扱いはしておりません。したがって当院では母子同室ができません。
が、世界的には母子同室が母子ともに「良いこと」とされています。病院選びの時に良くお考えください。
母子同室とは「出産直後から原則24時間一緒」のことを言います。「夜間預かり」とか「翌日から一緒」は本来の意味では「母子同室」ではありません。
母子同室の必要性 |
<母子相互作用や母乳育児の確立>
出生後、早期からの母子の接触は、後々の母子の愛情、基本的信頼の確立に大きな影響を及ぼすと考えられ、事実、科学的データで裏付けされるようになりました。
また、お母さんと赤ちゃんのみでなくその他の家族(父親、兄、姉、祖父母など)とも触れ会う機会を多く持つことができます。
さらに、入院中から一日中一緒に生活することによって、赤ちゃんを理解し、育児の仕方を習いながら実践することにより退院後に
大きなパニックに陥ることなく育児することができます。
事実、浜松市内の総合病院ではすべてこの春から母子同室になりました。
残念なのは母子同室なのにあまりに人工乳の育児が多いことです。
また、母子同室では早期の頻回授乳と自律授乳(与えたい時にいつでも与えられる)が可能となり、
母乳哺育の確立を助長する大きな要因となります。
感染予防の面では、新生児室で集団保育されるよりも母親が自分の赤ちゃんのみを取り扱うため感染のリスクが低いと証明されています。
−赤ちゃんはお母さんが同じ部屋にいる事がわかっています− 東大の小林先生のグループは、赤ちゃんの体表温度がお母さんが部屋を出ていくことにより下がり、 赤ちゃんの部屋に戻ってくると再び上昇する事を発見しました。 |
母子同室の実際 |
母子に異常がなければ、出生すぐに赤ちゃんはお母さんに分娩台の上で抱かれ、そのまま注意深く観察しながら約一時間お母さんの胸の上で過ごします。
少なくとも分娩後60分以内に初めての授乳(乳頭を吸ったり、なめたり)をします。出生後60〜120分の時点では
赤ちゃんの意識がはっきりと醒めていることより60分以内の授乳が大切といわれています。
当初は30分以内といわれていましたが、1990年スウェーデンのリグハート博士がカンガルーケアーをしていると赤ちゃんは自分でお母さんの乳首を捜し、
自分で吸てつを始めることを発見しました。
それに要する時間が約50分だったことから、60分以内の授乳となりました。
分娩室においてもなるべく赤ちゃんと一緒に過ごします。分娩後1時間で母子共に異常がなければ分娩室から産褥室に帰室し、
その時から実質的な母子同室が始まります。分娩後8時間の歩行開始までは助産師、看護婦が訪室し、全面的に授乳介助を行ないます。
分娩後8時間の時点で授乳指導を行い、児の取り扱い方(母親の手指の清潔、抱き方、おむつの替え方など)や授乳方法などについて個々に説明、援助します。
夜間においても日中と同様に行ないます。
帝王切開術後の場合、手術当日は新生児室にて赤ちゃんを預かりますが、翌日歩行開始まで全面介助にて授乳は続けます。
また点滴施行中などは要望に応じて介助します。
歩行開始後は定期的な訪室と、お母さんから要望があった時に随時対応します。
赤ちゃんの観察が必要な時や治療を要する黄疸など、やむをえず新生児室で管理しなければならない時以外は、
沐浴や小児科診察を除く時間を常に一緒に過ごすことになります。
ただし、母親の身体的及び精神的状況により同室が困難と判断される場合には、一時的に児を預かることがあります。
この場合、その後の母子関係が順調であるかを把握し、支援をしていきます。
多くの病院が母子同室を採用したことは喜ばしいことですが、2〜3分のカンガルーケアー(本来は60分)や
1〜2日後からの母子同室(生まれてすぐから24時間)や昼間だけの母子同室は、セレモニィであって本当の意味のカンガルーケアーや母子同室ではありません。
残念でなりません。
赤ちゃんのことをすべて知って、その対処の仕方を知ってこそ、安心、安全なそして心配の少ない最良の育児ができるのです。
哺乳動物の掟 |
「哺乳動物の母獣は、生まれたばかりの我が子を離すことなく、常に至近距離に置いており、生まれるとすぐ授乳し、母乳だけで育てている。
哺乳動物の母獣は、授乳することによって、はじめて育児行動が可能になる。
これは乳頭に加えられる吸啜刺激による母体の内分泌の変化で、育児行動が誘発され、代謝・思考・感情など、すべてが育児指向型になる。
・・・もちろんヒトの母でも、例外ではありえない。
そして哺乳動物の子は、哺乳によってはじめて母を知り、母への執着・基本的信頼感を獲得し、その動物としての生き方を学ぶ。
もちろんヒトの子も例外ではない。・・・すなわち母乳育児での母乳の意義は、母乳という物質にあるのではなく、授乳・哺乳という行動にある。・・・
この授乳・哺乳が、分娩後早期の時点で支障なく出来るためには、親子は離れていてはならない。四六時中、至近距離に位置していなくてはならない。・・・
山内逸郎(産科医と小児科医へのメッセージ)より
−プロラクチン(育児ホルモン)− おっぱいを赤ちゃんが吸うと、お母さんの脳からプロラクチンというホルモンが出てきます。 このホルモンは育児ホルモンとも言われ、オスの鳥に与えると育児のための巣を作ったり 親行動を引き出すことが分かっています。 「プロラクチンは女性を母親にするホルモン」といってよいようです。 |