卒乳と断乳



一般に日本では1才になって物が食べられるようになると母乳をやめる、つまり断乳を薦められます。
その理由は虫歯であったり、あまえっ子になるというようなことなのですが本当でしょうか。
ちなみにユニセフ・WHOではその宣言(イノチェンティ宣言:1990年および2005年)の中で「2年間以上」母乳を続けるように薦めています。
勿論、色々な理由で母乳ができなくなる状況は様々ですが、
お母さんには是非、なぜWHOがそんなにも長く母乳育児をすることを勧めているか知って居て戴きたいと思います。

なぜユニセフ・WHOはそんなに長く母乳を飲むことを薦めているのでしょうか。
それは長く母乳をあげているお母さんなら誰でも気づいていることなのですが、一年以上の母乳は体の栄養もさることながら、
心の栄養が主だからです。
つまりこの時期の母乳は赤ちゃんの精神安定剤のようなもの、だからなのです。

昔は赤ちゃんは何もわかっていない、と考えられていました。
しかし、今では生まれてきたときには目も見えるし、耳も聞こえる、匂いもわかっていることが判明しました。
まして1〜2ヵ月くらい経つと赤ちゃんはお母さんが近くにいて自分を見ていてくれるか、周囲に対し不安と恐怖を感じているといわれています。
この不安や恐怖を癒すのがお母さんの笑顔であり、母乳であるのです。

赤ちゃんには求める間はいつでもおっぱいを与えてください。たとえ2才3才でもかまわないのです。
日本の母子手帳も従来は1才位から「おっぱいは止めましたか」という記述がありましたが、
今年(2002年)の母子手帳から消えました。

母乳は単なる食料ではないのですから、離乳食を食べられるようになったからといって、やめる必要はありません。

病気のとき
お母さんが風邪などを引くと、内科の先生たちは「この薬を飲んでください。
一週間は母乳を止めてください」と気楽にいわれます。一週間おっぱいをやめるということは、どういうことか、わかっているのでしょうか。
原則的にはお母さんが風邪を引いても赤ちゃんとは離れてはいけませんし、母乳も止めなくてもよいのです。
赤ちゃんにやさしい薬を飲んで早くよくなりましょう。
なるべく薬は飲まないほうがいいのですが、下痢、咳、熱のひどいときにはよい薬を早く飲んで一刻も早く直しましょう。

授乳中や妊娠中に薬剤を飲んでいいか、迷ったら電話ください。

国際的には、母親が結核やエイズ以外では母乳を止めることは必要ないと言われます。

赤ちゃんが病気のとき
下痢でも風邪でも積極的に母乳を与えましょう。
風邪のビールスに対する免疫があって早くよくなると考えられます。
母子を放すことは絶対によくありません。

妊娠中の授乳
授乳中に妊娠することもあるでしょう。日本のほとんど全ての医師は妊娠すると授乳を中止するよう薦めています。
その理由は「流産するから」といわれていますが、妊娠中に授乳しても流産率は変わりません。
海外の研究でも、石井第一産科婦人科クリニックの統計でも流産率は増えないのです。
安心して授乳しましょう。
2009年10月に石井廣重の「妊娠中の授乳は流産を増加させない」という論文が日本産科婦人科学会の学会誌に掲載されました。

ただし、妊娠8ヵ月くらいであまりにお腹が張って早産の危険が迫った時には、回数を減らすとか配慮しなくてはならないかもしれません。

卒乳
以上から無理やり母乳を止める、つまり断乳は「必要ないもの」と考えられるようになりました。
母乳は“赤ちゃんが欲しがる間、欲しがるように与えれば一番よい”ということが再認識されるようになってきました。
それを「卒乳」と言います。